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「炭を焼き、ふるさとをつくる。」祐乗坊 進さんー珈琲物語


帝国器材のコーヒーは「木のストーリー」にこだわり、公園の伐採木や剪定枝を炭にして炭火焙煎したコーヒーです。

参考:2021.07.26 帝国器材のコーヒーは、”公園の木”で焙煎!

このコーヒーを焙煎していただいているのは、ランドスケープデザイナーの祐乗坊 進(ゆうじょうぼう すすむ)さんです。
祐乗坊さんに、伐採木の活用や炭焼き、そしてコーヒーの焙煎にかける想いを伺いました。

祐乗坊 進さんは1949年生まれ、東京都国立市のご出身です。
東京農業大学で造園を学んだ後にドイツへ留学、ベルリン工科大学を卒業。帰国後よりランドスケープデザイナーとして活躍されます。
2001年には横浜市みなとみらい・汽車道の基本計画設計・デザインで土木学会デザイン賞最優秀賞を受賞。

これらの本業の傍ら、炭焼き(炭芸)、コーヒーの焙煎、生木を使った木工などを通じて、人と緑の新しい繋がりにチャレンジされています。

 

公園の伐採木を活かす

1987年、炭を使った河川浄化の新聞記事を読んだ祐乗坊さん。「自分でも炭を焼いてみたい」とチャレンジしたことが、炭焼きを始めるきっかけだったそうです。
一般的な炭焼きでは所有している山の木を使いますが、祐乗坊さんは公園の伐採木で炭をつくっており、市街地ならではの取り組みをされています。

祐乗坊さん:
「炭焼きを始めた当時、多摩市では雑木林を切り開いて土地の造成が行われていました。そのとき、伐り出された木を何かに使えないかと相談され、炭にしてみた。これが伐採木を炭にするきっかけでした。」

できあがった炭は、防災用備蓄燃料として学校や多摩ニュータウンの居住者の方へ無償配布しているということです。

祐乗坊さん:
「伐採木が炭となり備蓄燃料として地域に還元される、緑の循環です。人と緑のつながりを見えるようにすることは、ふるさとへの愛着にもつながります。」

 

味わってほしい、炭火焙煎の美味しさ

祐乗坊さん:
「備蓄燃料とは別の使い方を考えました。以前から興味があったコーヒーの焙煎にチャレンジし、このコーヒーが生まれました。炭火は温度のコントロールが大変難しいのですが、豆がふっくらと仕上がり、挽くときに柔らかい感触があるのが特徴です。
豆はフェアトレード&オーガニックにこだわっています。世の中にこんなに美味しいコーヒーがあるんだ、ということを知ってもらいたい。」

 

「地球の頬っぺたを撫でて」人間は皆同じと分かった

ドイツ留学から帰国する途中、「地球の頬っぺたを撫でながら帰りたい」と思い(素敵な表現!)、世界旅行をしたという祐乗坊さん。そこで大切なことを学んだそうです。

祐乗坊さん:
「50カ国ほど周り、“人間は皆同じ”という当たり前のことが分かりました。例えば貧しい国で飢えてる人がいるニュースを見ても、どこか他人事に感じてしまうのではないでしょうか。けれどもちろん、自分と変わらない同じ人間なのです。本当に相手の気持ち・立場になって考える力・想像力が、SDGs然り本当の国際化には必要なんですよね。」

祐乗坊さんがフェアトレード&オーガニックなコーヒー豆にこだわる理由には、この世界旅行での経験があるのかも知れません。

 

「こどもの自分史を豊かにする」

祐乗坊さん:
「ぼくの幼少期は、国分寺崖線が遊び場であり隠れ場でした。崖を登って遠くに富士山、下には多摩丘陵が見える風景のなか、だんだんと夕日が沈んでくる。近所の煙突からはお米を炊く薪の匂いがしてくる…。
こういった原風景が、いまの職業につながる原点だったのだと思います。」

ご自身の経験から「こどもの自分史が豊かになると、想像力(創造力)も豊かな大人になります」と力強く語る祐乗坊さん。
こどもたちと雑木林で木を伐ったり焚き火や炭焼きを行うワークショップにも取り組まれています。

祐乗坊さん:
「ワークショップは、こどもたちの地元で開催することにこだわっています。
特別な場所での一時的な体験ではない、学校へ行ったり買い物へ行ったりする日常の中に、自然と触れてワクワクする体験を織り込むことが大切です。
緑の循環と合わせて、こどもたちのコミュニケーションを活性化することは、ふるさとづくりにも大切なことです。」

 

“まちに手垢をつける”炭焼き窯づくり

祐乗坊さんは炭焼きだけでなく、窯づくりにも“こだわり”があると言います。

祐乗坊さん:
「1998年、多摩ニュータウン30周年の記念事業として行った窯づくりでは、多摩川の玉石などの地元の材料を使用しました。窯づくりは、地元で採れる材料を使うから面白いんです。
さらに住民の方々に参加してもらい、それぞれ玉石の裏側に名前を書いてもらいました。」

自分たちの記憶や証を刻み込む、こうした「まちに手垢をつける」ことが大切と語る祐乗坊さん。「住んでいる場所を自分のふるさとにしてゆくことが大切」という言葉が印象的でした。

 


インタビューを終えて

本業であるランドスケープデザインの傍ら、炭焼き、コーヒー焙煎、こどもたちとのワークショップなど、様々なことに挑む祐乗坊さん。
活動は多岐に渡るものの、今回お話を伺って、幼少期の原風景に根差した「ふるさとづくり」の考えを知り、目的・想いは全て同じ方向にあることが改めて分かりました。
美味しいコーヒーを頂きながら、人と緑のつながり、ふるさとづくり、SDGsと国際化など、様々なことに思いを馳せることができたひと時でした。

これからも美味しいコーヒー豆を、よろしくお願いいたします!
(インタビュアー:中野・吉田、撮影:木下)